ネットで「SES」と検索すると、「やめとけ」「闇」「ブラック」といったネガティブなワードが並びます。

実際にSES企業で3年間働いた筆者の経験から言うと、これらの意見は半分正しく、半分は誇張です。

この記事では、SESがやめとけと言われる理由を一つひとつ検証し、「本当にやめるべきケース」と「続けてもいいケース」を解説します。

理由①:スキルが身につかない

やめとけ度:★★★★☆

SESで最もよく聞く不満がこれです。客先のプロジェクトに参画する形態のため、自分で案件を選べないケースが多く、テスト工程やドキュメント作成ばかりを担当させられることがあります。

筆者の場合、最初の1年半はテスターとして過ごしました。テスト設計書の作成とテスト実行がメイン業務で、コードを書く機会はほぼゼロ。プログラミングスキルが伸びず、大きな焦りを感じていました。

ただし例外もある

SES企業の中にも、エンジニアのキャリアを重視して案件を選んでくれる会社は存在します。開発案件を中心にアサインしてくれる企業や、社内研修制度が充実している企業であれば、SESでもスキルアップは可能です。

判断基準:入社して1年以上経っても希望する技術領域の案件にアサインされない場合は、環境を変えることを検討した方がいいでしょう。

理由②:還元率が低い

やめとけ度:★★★★★

SESの給与構造は「客先からの支払い額(単金)× 還元率 = エンジニアの給与」で決まります。

問題は、多くのSES企業が還元率を開示していないこと、そして開示していても実態と異なるケースがあることです。

  • 求人広告で「還元率80%」と謳っていても、社会保険料や営業経費を引いた「実質還元率」は50〜60%程度というケースは珍しくありません
  • 自分の単金がいくらなのかを知らないエンジニアも多い
  • 単金が上がっても給与に反映されない場合がある

確認方法

自社の営業担当に「自分の単金はいくらですか」と聞いてみてください。教えてくれない場合や、曖昧な回答しか返ってこない場合は要注意です。

判断基準:単金に対する還元率が50%以下の場合、給与面では不利な環境にいる可能性が高いです。

理由③:現場ガチャが厳しい

やめとけ度:★★★☆☆

SESの特徴として、「どんな現場に配属されるか分からない」という不確実性があります。いわゆる「配属ガチャ」です。

  • ホワイトな現場に当たれば快適に働ける
  • ブラックな現場に当たれば長時間労働・パワハラのリスク
  • 技術的に面白い案件もあれば、退屈な保守案件もある

筆者の経験では、3年間で4つの現場を経験しました。うち1つは非常に良い環境で多くのことを学べましたが、残り3つは正直つらいものでした。

対処法

自社の営業に対して、希望する条件(技術スタック、勤務地、残業時間など)を明確に伝えることが重要です。「何でもいいです」と言ってしまうと、利益率の高い案件(=エンジニアにとっては条件が悪い案件)に回されることがあります。

理由④:キャリアパスが見えない

やめとけ度:★★★★☆

SESのキャリアパスは大きく分けて以下の3つですが、いずれも不透明な面があります。

  1. 現場リーダー → PM:客先常駐のまま役職が上がるが、自社での評価と連動しにくい
  2. 営業・管理職:エンジニアを辞めて営業側に回るキャリア。本人の希望と合わないことも
  3. そのままSES継続:年齢が上がるにつれて案件が限られてくるリスク

自社開発企業であれば、テックリード、アーキテクト、VPoEなど技術者としてのキャリアパスが明確に用意されている場合が多いですが、SES企業では自社プロダクトがないため、これらのポジションが用意されにくいのが現実です。

理由⑤:帰属意識が持てない

やめとけ度:★★★☆☆

SESエンジニアの日常は「客先のオフィスで、客先のチームと一緒に働く」というものです。自社に出社するのは月に1回の帰社日だけ、というケースも珍しくありません。

この環境では「自分はどこの会社の人間なんだろう」という感覚に陥りやすくなります。

  • 客先の社員とは同じチームだが、待遇は異なる
  • 自社の同僚とはほとんど顔を合わせない
  • 会社の方針やビジョンに対する関心が薄れていく

この点については、リモートワークが増えた現在、自社開発企業でも同様の課題はあります。ただし、SESの場合は構造的に帰属意識が持ちにくいのは事実です。

理由⑥:経歴が複雑になる

やめとけ度:★★☆☆☆

SESでは短期間で複数の現場を渡り歩くことがあるため、職務経歴書が複雑になりがちです。転職面接で「なぜ短期間で現場が変わっているのか」と聞かれることもあります。

ただし、これはSESという業態を理解している面接官であれば問題になりません。IT業界の転職市場では、SES出身者は珍しくないため、SESの仕組みを知らない面接官は少数派です。

理由⑦:年齢とともに案件が減る

やめとけ度:★★★★☆

SES業界には「35歳限界説」という言葉がかつてありました。IT業界全体では人材不足を背景にこの説はほぼ過去のものになっていますが、SES業界では案件の募集要項に年齢条件が設けられるケースが依然として存在します。

年齢が上がるにつれて、客先が求める単金も上がるため、アサインできる案件が限られてくるのです。特に、若手と同じスキルレベルのまま年齢だけ重ねてしまうと、案件が見つからず「待機(社内待機)」になるリスクがあります。

判断基準:30歳を超えてSESを続ける場合、マネジメント経験や特定技術の専門性など、年齢に見合った付加価値があるかを自問してみてください。

結論:こんな人はSESを辞めた方がいい

7つの理由を検証した結果、以下に当てはまる方はSES以外の環境を検討することをおすすめします。

  • 1年以上開発経験が積めていない
  • 還元率が不透明で、年収に不満がある
  • 30歳以上で、専門性が確立できていない
  • キャリアの方向性が見えず、漠然とした不安がある

逆に、以下のような方はSESでもう少し経験を積む価値があるかもしれません。

  • 開発案件にアサインされており、スキルが身についている
  • 還元率が明示されており、給与に納得感がある
  • 多様な現場経験を通じて、自分の適性を探っている段階

大切なのは、「やめとけ」という一般論に流されるのではなく、自分の状況を客観的に分析した上で判断することです。